こんにちは!
「研究」と「現場」のハイブリッドトレーナー
比嘉一雄(ひがかずお)です?
ある女性のクライアントさんから質問をいただきました。
「妊娠中は運動してもいいんですか?」というものです。
そのクライアントさんは、数年前、結婚式に向けて
「最高の姿で花嫁さんになりたい」と
一緒にトレーニングさせていただいていて、
見事3ヶ月で-9kgという結果を出しました。
そのお客さんが、めでたく赤ちゃんを授かったというのです。
感慨深いですね。本当に嬉しいです。
さて本題です。
妊娠中は運動してもいいのか?
答えは「YES」です。
※安定期に入っての話になります!
漠然と「いいだろうな」とは知っていたのですが、
何がどのようにいいのだろうと考え、
あまり知らないことが多かったので、
様々な論文を読んで、または知識ある人に聞いて調べました。
長くなりますが、興味ある方は是非読んでください。
妊婦さんへのトレーニング、一体何がいいのでしょうか?
調べた結果、大きく以下の5つが挙げられるかと思います。
1.胎児への好影響
2.出産時の好影響
3.体重の管理ができる
4.腰痛改善
5.妊婦性糖尿病の抑制
です。
では、1つずつ見ていきましょう!
1.胎児への好影響
妊婦さん、何よりも生まれてくる赤ちゃんが最優先ですよね。
そこで、まずは、胎児への好影響についてお話いたします。
妊娠中に週に3-5回の自重エクササイズを行なっていた妊婦さんから生まれた子供は
エクササイズを行なっていない対照群に比べ
身長が高く除脂肪体重(骨や筋肉など)が重かった
という報告があります(11120515)。
妊娠中に運動をしている方が
“元気な赤ちゃん”
が生まれてくるのです!
2.出産時の好影響
さらに、元気な子が生まれるだけでなく、
妊娠中に身体的に活発な女性は早産のリスクが低減し(2301361)、
帝王切開の確率が低減し入院期間が短縮される
ということもわかっています。
Clappらは、頻繁にエクササイズを行なっていた妊婦は、
自然分泌に要する時間が短く、
また複式分娩と経膣手術分娩の頻度が低い
とも報告しています。(2256458)
3.体重の管理ができる
次は、単純なことなのですが、運動をすることによって、
妊婦さんの体重の過加増を防ぐことができます。
一般的に妊娠中に必要な体重増加は7~8kgと言われています。
しかし、平均で約13kg程増えているようです。
これは、ホルモン分泌の変化から食欲がものすごく出てしまうことも関係しています。
必要増量分は赤ちゃんが生まれたあとにすみやかに減ります。
しかし、必要以上の増量は単純に脂肪として蓄積されてしまうので、
その分の減量をする必要があります。
せっかくなら、産んだ後の事も考えながら過ごしたいですよね。
4.腰痛改善
次は、腰痛の改善です。
妊婦さんは腰痛のリスクが高まります。
それは
1)お腹が大きくなることによって、前方への重心の移動により、
持続的な背中への負荷が増えるため
2)レラキシンホルモンの分泌増加などにより脊柱の靭帯や、
筋肉が緩みやすいことにより
ます。
レラキシンとは、筋弛緩剤などに使用されるホルモンです。
実際に、妊婦さんはレラキシンホルモンの分泌増加によって
関節角度の増大するという報告もあります。(12547738)
さらに妊婦さんは体重が増加するので、当然今以上の筋力が必要になってきます。
ですのでエクササイズには筋力増強効果もありますので、
早め早めのエクササイズをオススメします。
5.妊婦性糖尿病の抑制
最後の5番目は妊婦性糖尿病(GDM:gestational diabetes mellitus)の抑制です。
GDMは妊婦さんの10%に起きると言われています。
しかし妊娠中に運動を行うとGDMになる危険性が60%低下すると報告されています。当然、GDMになった女性は出産後も2型糖尿病になりやすいということもわかっています。
さらにこのGDM、母親だけでなく生まれてくる子どもにも影響を与えてしまいます。
GDMの母親から生まれた子どもは、将来的に肥満症やインスリン抵抗異常、2型糖尿病などのリスクが高まるという報告があるのです。(8422798)
さらに、GDMの妊婦さんは巨人症の赤ちゃんを生む可能性が高まってしまいます。
しかし、妊娠中の軽い筋トレはそのリスクを低減することもわかっています。
妊娠中の運動のリスクは?
エクササイズの妊婦さんに与える好影響について述べてきました。
しかし、本当に安全なのでしょうか?
これまで、妊娠中のエクササイズは回避されてきました。
その理由は、
1.運動による高体温が胎児に影響があると考えられてきたため
2.激しい運動が与える流産へのリスクが不明であるため
の2点です。
しかし、これらの理由を肯定するようなヒトを対象とした調査報告論文は今のところありません。
むしろ影響がないという論文が数多く出てきました。
それらを機に、最近ではマタニティーエクササイズという新しいジャンルが確立され
多くの産婦人科で運動を推めています。
でも、リスクはできるだけ小さく、利益を最大限に得たいですよね。
そのためには、最大心拍数の70%以下で運動を行うことがいいみたいです。
どんな人でも同じなのですが、無理は禁物なのです!
ちょっと辛いかなくらいの運動をたくさんしましょう!
【今日の一句】
モーツァルト エクササイズを 胎教に
※()内の数字は論文検索Pubmed IDです。