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エクササイズ

パンプアップを求めて・・・2

パンプ・アップは充血?

前回の記事で書いたように、
パンプ・アップは筋肉の充血というわけではありません

筋肉内の血流量は、
小さい力(だいたい最大筋力の30%)で収縮すると増えることが知られています。
しかし、発揮筋力を上げていくと筋内圧が増えるので、
筋内に血液が流入しにくくなり、
最大筋力の80%を超えるような強い力発揮をすると、
ほとんど血液の流入がなくなり、
筋収縮中「局所性貧血」が起こってしまいます。

筋肉も貧血を起こすんですね。
そして、筋収縮を緩めるとその周辺の筋肉の循環抵抗が大きく減少し、
その結果、多量の血液が筋肉に流れ込みます。
「過血流」状態になるのです。

しかし、この筋内の血流量の増大は、
流入する血液(動脈流)と流出する血液(静脈流)の両方の増加によって
起こるので、筋肉が「充血」するということにはなりません。
あくまでも水分の交通量が増えるだけなのです。

もし、パンプ・アップが血流量の増加によっておこるのでしたら、
サウナや入浴、ストレッチ、さらにはマッサージによって
血流量が増えてもパンプ・アップすることになりますよね。
(ある種のマッサージによって局所的に膨張することはありますが・・・笑)

血流は関係ない?

では、パンプ・アップに血流量は関係ないのでしょうか?
そんなことはありません。
血流が多いとそれだけ体内の栄養素や不純物の循環が良くなりますので、
前述の「乳酸」「アデノシン」などの代謝産物を
クリアランスする時間が早くなります。

クリアランスが進み、筋細胞内のpHが安定してしばらくすると、
筋肉細胞内の水分量は減ってきて、パンプ・アップ状態は収まり、
やがて、元のサイズに戻ってしまいます。

筋肉の損傷とパンプ・アップの関係は?

「筋細胞の損傷部位から血液なり水分が流入する事によって
 パンプアップが起こる」

という説ですが、それははっきりと間違いです。

確かに、重度の筋損傷を引き起こすようなエクササイズを行うと、
その損傷部位に水分が集中し、その周辺が熱を持ち腫れることがあります。
それはパンプ・アップではなく、「浮腫」もしくは「エデマ(edema)」といいます。

まず、浮腫はエクササイズ後、2~3日後から現れます。
このことからもはっきりとパンプ・アップとその性質が異なることが
分かるかと思います。
さらに、浮腫は、損傷した筋細胞内から水分が漏れ出てしまって、
周辺に水が溜まってしまう状態のことです。細胞内に留まっていられないので、
腫れは時間をかけて次第に重力方向へ移動していきます。
私の実験などで、
上腕二頭筋に非常に大きな機械的ストレスをかけたエクササイズ実験を
行ったところ、エクササイズ部位は上腕二頭筋にもかかわらず、
2~3日後に、前腕上部にまでその腫れが下がってきたこともあります。

こういった理由で、長くとも2~30分しか持続せず、
トレーニング部位にしか現れないパンプ・アップとは全く異なるのです。

パンプ・アップが筋肥大へ及ぼす影響

ここまで読んできて、
「そもそも、パンプ・アップってカラダを格好良くする上で意味があるの?」
と思った方も多いかと思います。
では、パンプ・アップがカラダに及ぼす効果について書いていきましょう。

パンプ・アップが引き起こされる、
「乳酸」が蓄積されるようなエクササイズは、
筋肉成長因子であり、脂肪を分解する作用のある
「成長ホルモン(GH)」
の分泌を促します。

そのGHは、強く筋肥大を促すホルモンである
「インスリン様成長因子(IGF-1)」
の分泌を促します。

「乳酸」→「GH」→「IGF-1」と間接的に筋肥大の作用を
引き起こすと考えられているのです。

ですので、パンプ・アップを引き起こすようなエクササイズは
筋肥大の効果が期待できると考えてもいいのではないかと思います。

パンプ・アップを引き起こすエクササイズ

では、パンプ・アップを引き起こすためには
どのようなエクササイズがいいのでしょうか。

それは、スロトレやチューブトレーニングのように、
その動きの中で筋肉が弛緩しにくくい、
つまり、筋内圧が高まったまま抜けないエクササイズです。

繰り返しになりますが、パンプ・アップするには、
乳酸やアデノシンなどの代謝物質を溜め込まなければなりません。
そのためには筋内にできるだけクリアランスの機会を与えない、
すなわち血液を流入させない状態を作るエクササイズを行い、
筋内の環境を悪化させる必要があるのです。
特に、ゴムチューブやエキスパンダー、チェーントレーニングのように、
レップの後半になるにしたがって負荷が増加する「終動負荷」のエクササイズは
「増張力性収縮(auxotonic contraction)」といい、
パンプ・アップ引き起こすにはうってつけです。

増張力性収縮では、筋肉が血液をしぼり出すようにはたらくため、
強くパンプ・アップするのでしょう。

※チェーントレーニングの画像

ちなみに、通常のトレーニングは、反動を使ったり、
筋の長さ―張力関係、慣性などが関係して、
動作の最初に大きな筋張力を発揮し、その後、張力は次第に減少していき、
プライオメトリックにもなると完全に筋張力が抜けてしまうこともあります。
そうすると筋がポンプの作用をして、筋内の血流を止めることはできません。

パンプ・アップとバーニング

上述のスロトレや終動負荷トレーニングを行うと筋肉が
燃えているように熱く感じることがあります。
これを「バーニング」とか「バーン」といいます。

バーニングは、高強度エクササイズの末の乳酸やアデノシンなどの代
謝産物が、
筋肉の中にある「侵害受容器」を刺激し神経を過敏に反応させるのです。
それによって、痛みが発生するのです。
決して物理的に損傷をしているわけではないのですが、
カラダの防衛本能だと考えられます。

パンプ・アップとバーニングは切っても切れない関係なのです。
しかし、この痛みこそパンプ・アップの醍醐味であり、
やみつきになる所以なのかもしれません。
パンプ・アップは一筋縄ではいかない、まさにファムファタールなのです。

パンプ・アップの注意点

一方で、パンプ・アップには何点か注意点もあります。
それは、筋肉の可動域を減らし、
筋力やパワーを一時的に低下させてしまうのです。

上述のような、ゆっくりとして効かせるエクササイズは、
俊敏性を低下させてしまうことが研究報告でもわかっていて、
アスリートにとっての「いい動き」という点で悪影響を及ぼしてしまいます。
「動き作り」を目的としたトレーニングには
パンプ・アップは不向きですので注意が必要になります。

もちろん見栄えのいい筋肉づくりには、
大変有効ですので積極的に取り入れて行ってください。
各種エクササイズの最終セットに組み込むのがいいと思います。

ここまで「パンプ・アップ」について書かせていただきましたが、
パンプ・アップという性質をしっかりと把握して、
みなさんのトレーニングに取り入れてみてください。

決して自分のものにすることはできない、
ファムファタールのようなパンプ・アップを
追い求め、そして弄ばれ、
自分の目指すかっこいいカラダを目指していきましょう!

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