先ほどの投稿の参考に貼っておきます。
一般社団法人日本老年医学会
理事長 大内尉義
フレイルワーキング座長 荒井秀典
が出したステートメントです。
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少子高齢化は世界的に大きな課題である。
高齢化に伴う諸問題の一つとしてわが国においては
要介護状態にある高齢者数が増加し、
介護及び介護予防サービスに要する費用は 8 兆円を超えている。
高齢者においては生理的予備能が少しずつ低下し、恒常性が失われていく。
健常な状態から要介護状態に突然移行することは、
脳卒中などのケースでみられるが、
今後人口増加が見込まれる後期高齢者(75 歳以上)の多くの場合、
“Frailty”という中間的な段階を経て、
徐々に要介護状態に陥ると考えられている。
Frailty とは、高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する
脆弱性が亢進し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの
転帰に陥りやすい状態で、筋力の低下により動作の俊敏性が失われて
転倒しやすくなるような身体的問題のみならず、
認知機能障害やうつなどの精神・心理的問題、独居や経済的困窮などの
社会的問題を含む概念である。
しかしながら、この Frailty の概念は多くの医療・介護専門職により
ほとんど認識されておらず、介護予防の大きな障壁であるとともに、
臨床現場での適切な対応を欠く現状となっている。
近年、老年医学の分野で Frailty は、病態生理のみならず、
診断から介護予防における観点でその重要性が注目されている。
したがって、Frailty の重要性を医療専門職のみならず、
広く国民に周知することが必要であり、それにより介護予防が進み、
要介護高齢者の減少が期待できる。
Frailty の日本語訳についてこれまで「虚弱」が使われているが、
「老衰」、「衰弱」、「脆弱」といった日本語訳も使われることがあり、
“加齢に伴って不可逆的に老い衰えた状態”といった印象を与えてきた。
しかしながら、Frailty には、
しかるべき介入により再び健常な状態に戻るという可逆性が包含されている。
従って、Frailty に陥った高齢者を早期に発見し、
適切な介入をすることにより、生活機能の維持・向上を図ることが期待される。
また、「虚弱」では Frailty の持つ多面的な要素、
すなわち身体的、精神・心理的、社会的側面の
ニュアンスを十分に表現できているとは言いがたい。
このような学術的背景により、日本老年医学会は
Frailty の社会における認知度を上げるべくワーキンググループを形成した。
そのワーキンググループにおいて最初に行ったのが、
Frailty の日本語訳の検討である。関連学会にも呼びかけ、
様々な案について検討を行った結果、
「虚弱」に代わって「フレイル」を使用する合意を得た。
フレイルは、その定義、診断基準については世界的に多くの
研究者たちによって議論が行われているにもかかわらず、
コンセンサスが得られていないのが現状であり、
そのスクリーニング法や介入法に関する関心が次第に高まっている。
高齢社会のフロントランナーとしてのわが国においても、
フレイルの意義を周知することが必要であり、
高齢者の医療介護に携わるすべての専門職が、
食事や運動によるフレイルの一次、二次予防の重要性を認識すべきである。
このような活動を介して、高齢者の QOL の向上を図ることが可能となり、
介護に関わる費用の減少が期待できる。
平成 26 年 5 月吉日
一般社団法人日本老年医学会
理事長 大内尉義
フレイルワーキング座長 荒井秀典
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【今日の一句】
前向きに 加齢をとらえ すすんでく