こんにちは!「研究」と「現場」のハイブリッドトレーナー
比嘉一雄(ひがかずお)です‼
今回は、ちょっと毛色を変えて、高齢者へのエクササイズのアプローチについてです。
前回、タンパク合成について触れたので、
その関連で高齢者エクササイズとタンパク合成について書きたいと思います。
ダイエットにおいても健康においてもキーになってくるのは「筋肉」です。
特に高齢者において、サルコペニア(加齢によって筋肉が衰退してしまうこと)によって、
歩行が難しくなることは健康と自尊心を左右するかなり大きな問題の一つです。
サルコペニアの原因としては
1.タンパク合成の鈍化
2.運動に対するホルモン応答の鈍化
3.運動神経の離脱(TypeⅡ筋線維)と再支配(TypeⅠ筋線維)
4.運動不足
など様々にあります。
※4.の運動不足は、加齢とは直接に関係はないのですが、
高齢者は活動量が非常に低くなるのが一般的ですよね。
この原因のうち、1.のタンパク合成の鈍化について最近、面白い論文が発表されました。
その前にちょっと復習と、高齢者とタンパク合成について書かせていただきます。
前回も触れたように、「タンパク合成」と「タンパク分解」は常に同時に起こっていて、
タンパク合成-タンパク分解が
+であれば筋肉は作られ、
-であれば筋肉は分解されてしまい、
=であれが筋肉量は維持されます。
そして、タンパク合成を促す刺激としては、
「高強度エクササイズ」と「食事」の2種類あります。
若い人が、一定の食事をしていれば、
筋肉量をある程度一定に保つことができるのは、
この食事によって刺激されるタンパク合成の亢進があるからです。
しかし、
高齢者は「食事」によるタンパク合成の反応が著しく小さくなる
ことが報告されてしまします。
筋トレなどの「高強度エクササイズ」によるタンパク合成の反応も鈍化するのですが、
それは食事のそれとは比になりません。
高齢者にとっては「筋肉をつける」というよりも、
「筋肉を落とさない」という事の方が重要であると考えられます。
ここで、先ほどお伝えした論文を紹介いたします。
2012にアメリカはテキサスのTimmerman KL et al.らによって発表された研究報告によると
70歳前後の普段運動を行なっていない高齢者6名を被験者に対し、
食事(必須アミノ酸+糖質の摂取)の前に有酸素運動を行った時と、
行わなかった時とで、その後の食事によるタンパク合成がどうなるかという実験を行いました。
その結果、食事の前に一定レベル以上の有酸素運動を行うと、
高齢者でもタンパク合成が亢進されることがわかったのです。
この実験から、高齢者は運動の取り掛かりとして、健康のキーである「筋肉」へのアプローチとして、
筋トレに対して抵抗がある方でも、有酸素運動を行うことからでも十分に+になることが分かりました。
むしろ、今のところ筋トレによって、「食事」によるタンパク合成の増加は報告されていませんので、
今現在しっかり筋トレを行なっている高齢者の方も積極的に有酸素を取り入れる事をオススメします。
筋力トレーニングは週に二回がベストということが言われています。
有酸素運動は週に5回程度が提唱されていますので、
筋トレをしない日は有酸素という風にするとわかりやすくてとてもイイと思いますよ!
しかし、やはりサルコペニアに対する最も有効な打開策は「筋トレ」であるとされています。
それは、有酸素は筋肉を落とさないものですが、今の現状よりもより良くなりたいとするとやはり筋トレが重要になってきます。
高齢者は変形性膝関節症などによって、持続的な運動ができない方も少なくなくありません。
プールや自転車も手だと思いますが、有酸素運動は何も下半身を使わなくてもいいのです。
軽いダンベルやゴムチューブを持って、数分間上げたり下げたりしてもそれも立派な有酸素運動です。
上半身用の有酸素マシーンも最近は増えてきました。
むしろ、これからの高齢化社会、上半身の有酸素マシーンの需要がドンドン大きくなるかもしれないですね。
筋トレをして、それに追加して有酸素もしっかりやる。
これが高齢者に対する最強メソッドなんです。
【今日の一句】
歩き食べ タンパク合成 スイッチオン!